絵を巧く描くとことなど、ほとんどの人が可能だという話

 単純な塗り絵を想像してみてください。
線で描かれた円の中を、太めの筆で塗りつぶすだけの単純な作業です。

線からはみ出さずに中を塗りつぶすには、部分的に難しい場所がありますね。
なぜでしょうか?

原因は2つあります。
例えば、右利きの人を例にとってみましょう。

円を塗りつぶす
1つ目の原因は、円運動のせい。
人間の手の動きというのものは、肘あるいは手首を中心とした円運動になるので、この円運動に逆らうと描きにくいのです。
円を右左半分のエリアに分けて考えると、左半分は円弧に沿って描けますが、
右半分は円弧が逆になるので描きづらいわけです。

2つ目の原因は、単純に太い筆が邪魔して線を隠す部分があから。
よって、やはり右半分が描きにくい。

この2つのことに気がつけば、解決策はしごく簡単。
描きやすいように円を「回す」か、自分自身が「回る」だけです。

その他の例です。

ハサミで、2リットルの円柱のペットボトルを上下半分に切断する場合、
ハサミの上側を、ペットボトルの外側の方に出して切ると、真っ直切るのは難しく、内側に入れて切れば、思いのほかスムーズに切れます。

これは、ハサミの構造に気がついているかどうかだけの問題。

以上2つの例は「コツ」と呼べるほどのものではなく、
何気にこなしている人がほとんどでしょう。

絵を巧く描く(巧く見せる)だけということなら、
このような、ミルフィーユの如く「薄くてたわいないコツの積み重ね」のスキルさえあれば十分。センス云々は取りあえずいらないと思います。
だからほんとは、絵を巧く描くとことなど、ほとんどの人が可能なのです。

コツとは、まず隠れている問題点に気がつくこと。
問題点さえわかれば対処の方法はそれほど難しくありません。

しかし厄介なのは、多くの場合一人では問題点の存在さえにも気がつかないこと。これが、スキルを身につけることの共通の苦労ですね。

だれか、隠れている問題点を探すコツを教えてください。
2010.01.12 Tuesday 08:17 | 細かすぎるスキルの話 | comments(0) | trackbacks(0)

グラデーションに思う

今だったら、Photoshopのグラデーションツール一発で出来るグラデーション。
僕の学生の頃は、B1サイズ画面一杯のグラデを作るのにはテクニックがいるので、きれいなグラデを描いてくる奴がいると、みんなに尊敬の眼差しで見られたものだ。
今でも絵具を使って「見事なグラデーション」を施すのは、僕には難しいスキルの1つだと思う。

単純殺風景な背景処理をなんとかすべく、グラデはよく使われるものだが、どっこいグラデは奥が深い。

絵の初心者がよくやる「単色のグラデ」はグラデではなく、ただの濃淡・明暗。
グラデは、複数の色相があってこそ初めて真価を発揮するもので、最低でも3・4色は使いたい。
ただ、隣り合う色同士の色相選びに気を付けないとヤバい。
同色系統の色のグラデは安定性があってきれいだが、逆に面白みがないし緊張感がない。
補色同士のグラデでは、中間の彩度が落ちてグレーゾーンが発生してしまう。
これが厄介で、本来華やかに作品を演出するはずのグラデが、逆に薄暗くみすぼらしく見える原因になってしまう。
モチーフを生かす、明度の加減もまた難しい。
単純なグラデであるならば、ベタ面の方が明るく見えるし、モチーフも立つ。

グラデーション1単純なグラデーションならば、
モチーフの色との兼ね合いで、
グラデーション2ベタ面の方が明るく見えるし、
インパクトもある!









僕も良くグラデを利用するが、作品の善し悪しを決める要素のひとつになるので、いつもメチャクチャ神経質になる。
2009.10.02 Friday 11:47 | 細かすぎるスキルの話 | comments(0) | trackbacks(0)

落書きのススメ!

誰もが子供の頃、ノートの端っこやチラシの裏などに、なんとなく当てもなく落書きなるものをした経験があるはず。

この落書きは、プロのクリエーターの現場では、サムネイルという名前に変わって存在しています。もちろんそこには大人の目的があります。
●アイデアを素早くたくさん出す。(ブレーンストーミングのビジュアル化)
●イメージをビジュアル化して人に伝えやすくする。
●時には暇つぶしに(爆)

ある日のサムネイル

ラフスケッチと混同されやすいのですが、サムネイルは文字通り親指ぐらいの大きさの走り描きで(実際はそんなに小さいと描きにくいのでもう少し大きいですが)、僕の場合はクロッキー帳にボールペンで描きます。ラフスケッチはそれをもっと具体的に昇華させたもので、彩色する場合もあり、僕の場合はタブレットで描いてしまいます。また、建築やプロダクトデザイン現場のエスキースなどもサムネールと同じ性質のものです。

でも、ここで注目したいのは、サムネイル(デッサン・ラフスケッチ・エスキース含む)の目的よりも、その「効能」

●脳のイメージを、手の運動に伝える神経経路を鍛える。
●手の運動が、脳に刺激を与え(起電)さらにイメージが活性化される。

車に言い換えれば、脳はバッテリーで手はタイヤ。タイヤが動くことによって、バッテリーにエネルギーが蓄積されます。

落書きで描いた担任の先生の似顔絵が面白ければ、エスカレートして他の先生や友達の顔を夢中で描く。これがまさにこれ。
アイデアをどどっと出した直後に疲れを感じるのも、脳がフル回転で熱くなっている証拠。

パソコンに向き合ってマウスでページをめくっているだけでは、アイドリングと同じ。脳を動かすためには、「手のギア」を入れないと。

だから、もっと落書きしましょ!!






2009.07.09 Thursday 23:05 | 細かすぎるスキルの話 | comments(0) | trackbacks(0)

ワイエス展に思ったこと。

  2月11日(祝)、イラストレータ−で生計を立てることを決めた頃からずっと気になっていた、アンドリュー・ワイエスの展覧会をやっと見ることができた。(「アンドリュー・ワイエスー創造への道」/愛知県美術館)
  
作品の制作過程を見ることができる展覧会は、完成(未完成でも)にいたるまでの作者の葛藤や緊張感が伝わった来て好きだ。
ここで手を抜いているなとか、テンション上がってるなとか、あっ迷ってるとか、諦めたのかなとか・・・。デッサン紙の絵とは関係のない汚れにまで気がいく。
正直、このような展覧会では学芸員が後付けで解釈したと思える解説等は意識的に見ない様にしている。絵を描いているものにしか解らない息ずかいや筆のこすれる音を感じたいから。
 
ワイエスのテンペラ画は静止した緻密な彫刻物、水彩画は躍動する瞬間芸に感じた。

色を省いたセピア調彩色は洋画の特徴である遠近感を抑え込み、むしろ平面的にも感じる。垂直水平線を多用し空間を広めに取ったわかりやすい安定した構図。原画に近づき目を凝らさないと解らないほどの極細面相筆の点描や鋭いスクラッチ技法があるかと思えば、ポイントをより引き立たすための雑で荒々しくも計算された筆致と汚しもある。

こうした特徴は日本画の美意識やテクニックにも通じるものがあり、彼がおおくの日本人の心を動かした所以だということが、この展覧会を見てやっと確認できた。

  非常に残念ながら、彼はこの展覧会中の1月16日に天国に召された。
初めてみた彼の展覧会が生前最後の展覧会となってしまった。
これも何かの縁だろうか。
やっぱり絵は(リアルの)絵の具で描きなさいと彼が言っている様な・・・(苦笑)。

下は、同日に見た名古屋造形大学視覚伝達1年生写真展のスナップ。
名古屋造形大学視覚伝達1年生写真展
2009.02.16 Monday 10:51 | 細かすぎるスキルの話 | comments(0) | trackbacks(0)

水のキラキラ表現は、難しいか?

水面の比較的リアルな表現の中で、プールなど底が平らで色等も変化がない状態のものは、良く観察すれば規則性っぽいイメージがあって案外描きやすいモチーフです。海や川のように周りの環境によって表情が変わるものは、規則性がなくやっぱり難しい。デビッド・ホックニーのプール表現は面白いよなあ。
SONY/CX-PAL77号
SONY「CX-PAL」VOL.77
Design:ZAZA
Illust:Endo Yuzuru
2008.07.14 Monday 23:16 | 細かすぎるスキルの話 | comments(0) | trackbacks(0)

「切り抜き」処理の効果

バックが白地処理のイラスト等を「切り抜き」と呼びます。
切り抜きイラストの良いところは、スッキリ明るくシャープに見えるところ。
パステル調のやわらかな表現のイラストはその特徴から、どうしても「ねむく(ボケタ感じではっきりしない)て色がくすんだ感じになりがちですが、「切り抜き」処理をすることで、そこをカバーすることができます。

スズケン「ぱあとなあ」Vol.61&62
スズケン/社内報「ぱあとなあ」Vol.61&62
AD+D:Nakamori Koji (TIPTOP)
Illust:Endo Yuzuru (ENDLAND)


2008.07.14 Monday 22:37 | 細かすぎるスキルの話 | comments(0) | trackbacks(0)

唐仁原さんのテクニック

ずいぶん記事のUPの間が空いてしまった、反省しきり。

さて、ずっと気になっている人がいる。
アートディレクターでありイラストレーター、さらに東京は青山にあるHBギャラリーのオーナーでもある、業界では名の知れた唐仁原教久氏だ。
気になって見ているせいか、広告にもエディトリアルの挿絵にも、氏のイラストレーションをそこかしこで見かける。なぜ故に気になるかというと、絵に対する感性や考えかたが、私とリンクする部分が多いからだ。その感性の部分を言葉で説明するのは私には難しいので、ここでは、誰にでも分かり易い氏のテクニックの部分を紹介しよう。むろん私が勝手に解釈し感心していることであることは最初に断っておく。

●後ろ姿
氏は人物を描くおり、必要がない限り顔を描かない。もっと言うと後ろ姿を好んで描く。前向きや横向きでは顔を描かざるを得ないのだが、目鼻をいれてしまうとイラストがある意味キャラクター化してしまい、見る人の好みが出てしまう。目鼻をいれずのっぺらぼうにしてしまうと言う方法もあるが、これもイラストの雰囲気に合っていないとおかしく、受け手を戸惑わせる。後ろ向きにしてしまえば、顔をかかずに済むし、背中を見せることで、そこに一種の物語を漂わすことが出来、一石二鳥だ。これはイラストでは良く用いられるテクニックの一つ。

●構図とデッサン
氏のデッサンは、アートディレクターであるが故に、非常に計算されたものだ。絵を安定して見せるため、垂直水平線を大切にし、フリーハンドでありがちな、勢いのある線や不安定な線を極力排除してある。でも見せ場の部分(特に人物)では、モチーフを微妙に右に傾けるなどしてわざとバランスを崩し、イラスト全体が固くなりすぎない様に配慮してある。

●線の特徴
氏のテクニックの一番興味深いところは、線のエッジだ。
ドローイングのイラストは、線幅・線のぶれ具合・かすれ具合などが作品に大きく影響してくる。この線をどう工夫するかが、ドローイングを武器にするイラストレーターの妙なのだ。紙の滲みやテクスチャーを利用したり、クレヨンなどの画材によって生み出される「エッジがガタガタ」の線は、イラストレーションをわざと稚拙にみせたり柔らかいイメージを抱かせるのに頻繁に用いられる方法だが、やりすぎると雑な感じが先攻してしまう。そこで、氏の考えたのは「エッジの片方がガタガタで、もう片方は比較的滑らか」と言うテクニックだ。この方法だと、ドローイングだけでラフでソフトなイメージのなかにグラフィカルで安定したイメージを入れ込むことが出来る。実に上手い方法だ。この絵を初めて見た時に「やられたっ!」と言う感じがした。
線のエッジ

その他にも、「線と線の結合部で、ところどころ片方の線をわざと出す。」などのテクニックも見られ、一発勝負や偶然性などの感性に頼るイラストレーターと違う「アートディレクターならでは」の計算されたドローイングテクニックが随所に見られる。
線のつなぎ

イラストレーションは、「どう描くかよりも何を描くか。」が私の持論だが、「細かいテクニックが、絵全体の雰囲気に影響を与える」と言うことも覚えておかなければ行けない。
2006.05.16 Tuesday 11:30 | 細かすぎるスキルの話 | comments(1) | trackbacks(0)

イラストレーターのデッサン力

デッサン力と聞いて「俺はデッサン力が自慢だ!」と声高に言う人は、プロの絵描きでもおそらくあまりないと思います。なぜならデッサン力がプロの「飯の種」になるとは限らず、なくてもプロを自称する人は山といるからです。

デッサン力とは、そもそもなんなのでしょう? 辞書での定義はともかく、目で見たこと・頭で創造したことを正確に手に伝える運動能力だと私は考えています。絵を描くことが特殊な能力と思っている人が世の中には多いようですが、絵を描くことはスポーツや楽器の演奏と同じく、運動能力によるところが90%以上だと言って良いでしょう。後の10%未満が、考える力でありセンスなのです。脳の指令を正確に腕や手に伝える神経回路を鍛えて太くすれば良いのですが、普段の生活の中では意識しないとなかなか出来ません。では、イーゼルに向かって人物や静物の木炭デッサンを黙々とやれば、確実に身に付くかと言ったら、答えはNOです。もちろん、やらないよりはましであることは間違いありませんが、それがデッサン力を身につける唯一の方法ではないのです。要は、「描く」と言う行為を繰り返して運動能力を高めればよいのです。習字・写経・模写・写生・トレースのような、何かを写す行為はとても有意義ですし、小さなメモ描き程度のものでも毎日やれば効果はあります。もう一つ大切なことは、集中すること。短時間で頭を使いながら(どうしてこの形なのかを考えながら)描くという癖が必要です。

イラストレーターと言う職業は、みなさんそれぞれ自分の得意な分野の絵で勝負しています。その中には、デッサンが狂っていようが関係ない「センス一番」の絵がもてはやされる分野も少なくありません。特に若い人向けのサブカルチャーがテーマの書籍などには、その傾向が強いようです。先にも話した様に、デッサン力がない方でもプロとして生活している人はたくさんいますが、そういう方は、それを補うべくアピールする何かを持っています。逆に、並以上のデッサン力があることで、それにこだわり過ぎてしまうあまり、アピール性に欠けた魅力のない絵となり、その結果食えないイラストレーターになってしまいます。
自分の弱いところをごまかして強いところだけをアピールする。それがイラストレーターの極意の一つだと言って良いでしょうね。
2006.04.12 Wednesday 10:22 | 細かすぎるスキルの話 | comments(2) | trackbacks(1)

「握り」の話

皆さん、筆記具を持つ時の握り方のことを考えたことがありますか? 特に言われないまま気づかず個性的な握り方をしているのを20代以下の人に良く見かけます。「別にどんな握り方だって描く(書く)ことが出来ればいいじゃん!よけいなお世話。」確かにどうでも良いことです。しかし、絵を描くこと(特にドローイング)においては、その握り方がずいぶん影響を与えます。

写真(上)は、一般的な持ち方で「指先で筆記具を持つ握り」。この方法だと手首と指先で筆記具をコントロールすることが出来ます。そして写真(下)が、若い方に良く見受けられる(欧米人にもこの握りの人が多い)「親指の付け根で固定する深い握り」で、おもに手首のみのコントロールに頼ることになります。

握り方1
握り方1


写真でわかるように、机の上などで描く場合、「深い握り」だと一挙に引ける線のストロークの長さは、「指先の握り」に比べて半減します。しかも、「深い握り」では細かいコントロールにおいて「指先の握り」より劣ります。

大きな絵を描く場合は、手首を固定せず「手首・肘・肩」を支点に描きますので、また持ち方が変わります。「指先で握り込む」ように筆記具を持ちます。

握り方2

いずれの場合も「深い握り」では筆記具をしっかり固定してしまい筆圧も高くなり、ドローイングのコントロール(線の強弱や勢い)の幅を狭くしがちです。

タブレットを使って絵を描いていると「アナログと同じ様に自由な線を描くこと」へのこだわりが常につきまとうので、トリビアネタにはなりませんが、こんな記事を書いてみました。
長年身に付いた癖を直すのは、簡単なことではないけれど、そのことに「気がつく」だけでも、何かのきっかけになると思います。

さあ、あなたはどんな「握り」をしていますか?
2006.04.03 Monday 10:16 | 細かすぎるスキルの話 | comments(0) | trackbacks(0)